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【ピロリ菌の除去】公立昭和病院 消化器内科・内視鏡科(東京都小平市)

公立昭和病院内視鏡科の武田雄一部長
公立昭和病院内視鏡科の武田雄一部長(提供写真)
ペニシリンアレルギー患者の除菌率は100%

 ピロリ菌の除菌治療は、2013年に慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)にも保険適用が拡大されたことで、除菌治療を受ける人が一気に増えた。

 ただし、保険適用になるのは「1次除菌」と、失敗した場合の「2次除菌」まで。同科では「3次除菌」などの保険適用外(自費)の除菌治療にも対応しており、除菌治療の約7割が他院からの紹介患者だ。

「ピロリ菌外来」を担当する内視鏡科の武田雄一部長(日本ヘリコバクター学会認定医=顔写真)が言う。

「保険適用外の除菌治療は2011年から行ってきました。それは当時、まだピロリ菌による慢性胃炎の除菌治療に保険が適用されなかったからです。2年後に保険適用になりましたが、それでもまだ学会等で推奨されながらも保険適用が認められていない治療や薬剤があるので、引き続き対応しているのです」

 最初の1次除菌は、胃酸の分泌を抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」と、「アモキシシリン(ペニシリン系)」「クラリスロマイシン(マクロライド系)」の2種類の抗生物質を1日2回、7日間服用する。2カ月後の再検査(呼気試験)で、ピロリ菌がいなければ除菌成功となる。

「1次除菌に失敗する一番の原因は、クラリスロマイシンに対する耐性です。3年ほど前までは成功率が全国平均で78%くらいまで低下しました。しかし、胃酸を抑える作用が強い新しいタイプのPPI(ボノプラザン)が登場し、その組み合わせでいまの除菌成功率は90%くらいに盛り返しています」

 2次除菌になった場合には、クラリスロマイシンを「メトロニダゾール(ニトロイミダゾール系)」に変更した3剤を使う。除菌成功率は92~93%という。そして保険適用外の3次除菌になった場合には、どの薬を使えばいいか定められていない。同科では、2次除菌の組み合わせのアモキシシリンを「シタフロキサシン(ニューキノロン系)」に変更して除菌する。

「当科の3次除菌の成功率は97~98%です。それでダメなら、薬剤感受性試験や同じヘリコバクター属の『ハイルマニイ』などの別の細菌の可能性を調べるために、杏林大学病院などに患者さんを送ります」

 ペニシリンアレルギーを持つ人も、「1次除菌」と「2次除菌」でペニシリン系抗生物質を使うので保険適用の除菌ができない。そのような場合、同科では最初から3次除菌の薬の組み合わせで対応している。これまでペニシリンアレルギーの人の除菌成功率(約20例)は100%という。

 同科の保険適用外の除菌費用は、初診料と処方箋料で約5700円(別途、薬局での薬代5000~6000円必要)。除菌判定の再診料は呼気試験を含め約1万円だ。

「大切なのは、除菌すれば胃がんのリスクは3分の1に減りますが、がんにならないわけではないということ。ピロリ菌感染が長年続いて『萎縮性胃炎』が強い患者さん、胃がんの既往のある患者さんには、年1回、最低5年は内視鏡検査を受けてもらいたいと指導しています」

■データ
東京都多摩地区の8市で構成される一部事務組合「昭和病院企業団」が運営。
◆スタッフ数=常勤医師8人
◆年間初診患者数=約5000人
◆ピロリ菌の年間除菌治療数=1次除菌300~350人、2次除菌80~100人、3次除菌約20人