独白 愉快な“病人”たち

美容ジャーナリスト山崎多賀子さん 乳がん闘病記が自分の心のリハビリに

山崎多賀子さん(C)日刊ゲンダイ

 この連載は反響が大きく、私ががんの治療中でありながらも元気に日常生活を楽しんでいる様子を見て、「私も遊んでいいんだ」と号泣したという地方のがん患者さんもいらっしゃいました。がん患者は華やかなことをしてはいけないと思い込み、地味な服を着て、自宅と病院を往復するだけの日々だったという彼女は、「私も東京に遊びに行く!」と前向きになり、私の記事を病院のロビーに置くよう掛け合ってくれたといいます。

 私は、治療中でも体調がいい時は普段通りに外出すると決めていました。髪の毛だけでなく、まつげも眉毛もない“黒い顔”で外を歩けませんから、メークして、ウィッグを着けて仕事に行ったら、私ががんだと知らない知人が「最近、きれいになった?」と言ったんです。この時「よっしゃ!」と、心の中でガッツポーズしました。

 がん患者は死に対する不安がある中で、ある人は仕事を、ある人は人間関係を失うこともあります。治療費や生活費など金銭面での不安もあります。それらの原因の多くは、「がんになった」という、ただそれだけの事実です。私もがんを告知された時、鬼ごっこでタッチされて、大きな川の向こうにいきなり連れていかれた気がしました。やりがいも楽しみも奪われて、薄暗い場所で、一生、生活しなければいけない……と絶望感に見舞われたんです。でも、イキイキと生活する乳がんの先輩の話を聞いているうちに、「それは違うぞ。がん患者でも前向きに生きることができる!」と思い直しました。

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