当事者たちが明かす「医療のウラ側」

キレイに病院のなかで起きていること

(C)日刊ゲンダイ

 病院の建て替えラッシュが止まりません。建て直されたきれいな病棟で働くスタッフやそこに通う患者さんにとって、気持ちよく過ごせ、治療効果も上がるように思えますが、半面、心配な点があります。建て替えが経営悪化につながることです。

 現在、騒ぎが起きている茨城県にある土浦協同病院はその典型です。

 騒ぎの発端は昨年3月に場所を移し、新たに病院を建てたこと。その費用が当初予算の約350億円からなんと約468億円に膨れ上がったのです。

 その理由は、建築資材や東北復興、マンション建設ラッシュなどで作業員の人件費が上がったことと説明されていますが、そのしわ寄せは職員を直撃したのです。

 土浦協同病院など県内6つの総合病院と看護学校などを運営する県厚生農業協同組合連合会は2015年度決算で過去最高の87億円の経営赤字を計上。職員などのボーナス大幅カットや退職金積立を3年間凍結するなどの再建案を提示したのです。

 これに対して職員は「経営の失敗を職員に転嫁するのは許せない」と反発、組合員が半日ストライキを決行する騒ぎに。

 ボーナスは3月上旬になっても払われず、いまも労使の話し合いが続いています(3月14日現在団体交渉中)。組合アンケートでは職員の多くが3月末に退職を希望しており、茨城県の医療体制が大きくぐらついているのです。

 この病院は東京医科歯科大学と筑波大学からの医師を受け入れており、私の知人も働いていますが「正直落ち着いて患者さんを診られない」と動揺していました。むろん、いまも土浦協同病院の医療の質は維持されているとは思いますが、医師や看護師、職員は、生活が揺らぐなかで患者さんを診るのは大変だと思います。

 キレイな病院を見るたびに、この病院は大丈夫なのか、と思うのは私だけではないはずです。