がんと向き合い生きていく

「遺伝する」とはっきり分かっているがんは、ごくわずか

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 もしこの遺伝子を持っていると分かった場合、専門医による定期的な検診が勧められています。さらにこの場合は、卵巣がんになる確率が高いことと、卵巣は骨盤内にあってがんの早期発見が難しいことから、子供を生み終えた後、がん予防のために手術で卵巣を取る医療が日本でも行われるようになってきました。この遺伝子は、男性の乳がん、前立腺がんとも関係するようです。

■治療薬が効くかどうかを調べる遺伝子検査も

 ほかに、遺伝するがんには、全大腸がんの1~3%、遺伝性内分泌腺腫瘍などのまれながんがあります。

 たくさんの遺伝子検査の集積で、このような病気が分かってきました。家族歴などから「がんが多い家系」があることを考えると、まだ見つかっていない遺伝子がある可能性もあります。

 遺伝するがん遺伝子は、主に血液を採取して調べます。遺伝するがん遺伝子を持っていることが分かった場合、その方の医学的、心理的影響、また家族への影響などは大変なものと考えられます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。