がんと向き合い生きていく

「遺伝する」とはっきり分かっているがんは、ごくわずか

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 また、紛らわしいのですが、遺伝子検査とはいっても子孫に遺伝することとは関係なく、手術などで取られたがん組織そのものの「遺伝子異常」をチェックすることがあります。その結果によって、治療薬が選択される場合もあるのです。

 たとえば、肺がんの組織で「EGFR」という遺伝子異常を認めた場合、「ゲフィチニブ」(一般名)という分子標的薬に効果がみられる可能性が高いのですが、遺伝子異常がない場合は、ほとんど効かないことが分かっています。

 最近では、他の分子標的薬でも効く可能性が高いかどうかを調べるため、治療前にその薬剤用の遺伝子診断(コンパニオン診断)をする場合があります。その結果によって、その患者さんの治療に使えるかどうかの可否を判断します。

 遺伝子検査は、さまざまな形でがんの診断・治療に活用されているのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。