独白 愉快な“病人”たち

磯野貴理子さん独白 脳梗塞で「まだ死にたくない」と痛感

「左腕は今でも右腕とは違う感覚がする」と話す(C)日刊ゲンダイ

 結果的には脳梗塞だったのですが、脳梗塞は脳の一部の血管が詰まって組織が壊死する病気です。私の場合、幸いにも処置が早かったので投薬だけで済み、後遺症といえるようなものは残りませんでしたが、それでも左腕は今でもなんとなく右腕とは違う感覚がしています。

 病院に運ばれた翌日には、私は仕事に行くつもりでいたのですが、そのまま約1カ月半の入院生活になりました。その大半は転院したリハビリ専門病院でした。理学療法士の指導の下、ストレッチや自転車こぎといった体を使う運動と、パズルや漢字、計算といった脳を使う練習問題をひたすらやっていました。

 そこで毎回必ず聞かれたのが、「ここは何県ですか?」「何区ですか?」「病院の名前は?」といった質問でした。こんな誰でも分かるようなことをあまりにも毎日聞かれるので、ある日、「先生、これを間違える人はいるんですか?」と聞いてみたんです。すると「このボールペンを腕時計と言う人もいるんですよ」と返されて、「ああ、私はそういう病気になったんだ」と、そのときあらためて脳梗塞の怖さを知りました。

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