役に立つオモシロ医学論文

風邪予防にビタミンDサプリメントは効く?

(C)日刊ゲンダイ

 ドラッグストアなどでも市販されている「ビタミンDサプリメント」には、抗菌作用や抗ウイルス作用があることが知られています。

 したがって、理論上は風邪などの感染症を予防する効果があると考えられます。しかし、これまで報告されているビタミンDの風邪予防効果に関する研究結果はまちまちであり、一貫して効果があるとは結論できない状況でした。

 そんな中、これまでに報告されている複数の研究を統合解析して、ビタミンDの風邪予防効果を検討した論文が、英国医師会誌に2017年2月15日付で掲載されました。

 この研究は、ビタミンDサプリメントの摂取と、プラセボ(成分を含まない偽薬)の摂取を比較し、風邪の発症を比較したランダム化比較試験(治療効果を検討するうえで最も妥当性の高い研究手法)25件を対象としたものです。

 研究に参加した1万933人の個人データを統合解析しています。

 解析の結果、風邪の発症割合は、ビタミンDサプリメントを摂取した人たちで40・3%、プラセボを摂取した人たちで42・2%と、ビタミンDサプリメントの摂取で風邪の発症が統計的にも有意に低下しました。この効果は、ビタミンDサプリメントを33人に投与すると、そのうち1人の風邪を予防することができるというものです。

 日本人の平均的な食習慣において、極端にビタミンDが不足するとは考えにくく、積極的にサプリメントを摂取してもこれほどまで大きな効果は期待できないように思います。ただ、日光を浴びる機会が少ない、あるいは食事が偏りがちな人ではビタミンDが不足することもあります。

 こうした人では風邪予防効果がわずかに期待できるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。