あの話題の治療法 どうなった?

高濃度ビタミンC点滴 欧米でもう臨床試験が進んでいる?

つらい副作用がないがん治療
つらい副作用がないがん治療(C)日刊ゲンダイ

 米国で十数年前からがん治療法のひとつとして広がった治療法で、高濃度のビタミンCを静脈に点滴することで、がん細胞の動きを封じ込めるという方法だ。

 2度のノーベル賞を受賞したライナス・ポーリング博士が熱心に推奨したことで有名。博士は末期進行がんの患者を対象にした臨床研究を行い「点滴とサプリメントでビタミンCを投与すると、生存期間が対照群の4.2~6倍も延長する」と発表している。

 日本でも手術前投与や手術後のフォローアップ、抗がん剤や放射線との併用として勧める医師もいるが、どうなっているのか?

「がん専門医から無視された時期がありましたが、ここ数年、状況は変わってきています。この治療法を学ぶ医師も増えてきています」

 こう言うのは、首都圏で保険診療では認められていない、がんの補完代替治療を行う医師だ。

「日本と違って、欧米ではこの治療法の関心が高く、複数の大学で臨床研究が進んでいます」

 そのひとつが米国のカンザス大学でステージ3と4の卵巣がんの患者27人に行われた臨床研究。標準的な抗がん剤治療と、併用して週2回・1年間の高濃度ビタミンC療法を行った群とを比較したところ、抗がん剤の副作用が3分の1に減少、再発までの期間が16.8カ月から25.5カ月に延長したという。

 ジョンズ・ホプキンス大学ではステージ4の前立腺がんの患者を対象に、従来の抗がん剤治療群と、高濃度ビタミンC療法併用群との比較試験が行われているという。

「ビタミンCの血中濃度が高まると過酸化水素と呼ばれる活性酸素を大量につくり出します。正常細胞はこれを中和する酵素を持っているので問題ありませんが、がん細胞にはないので、過酸化水素が取り込まれると細胞死に向かうのです」

■つらい副作用がないがん治療

 最近では同じ理由で、ビタミンCが細菌やウイルスを殺す作用もあるのでは、と注目を集めているという。

 その一方で、ビタミンCは周りの細胞の酸化を阻止する代わりにシュウ酸をつくる。そのため、結石ができたり、腎臓の機能低下になるのではないか、との批判がある。

「逆にビタミンCは結石をつくりにくいとの研究もあります。そもそも水溶性のビタミンCは大量に体の中に入れても不要な分は体外に出ていく。そのため体内に蓄積して悪さをするということはありません。体に優しい治療法なのです」という。