Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

渡瀬恒彦さんのケース<上> がんなら家族が満足する介護できる

渡瀬恒彦さんは享年72(C)日刊ゲンダイ

 ポイントは、ここ。がんは、治療法の選択次第で仕事や生活を続けながら、ぴんぴんコロリで亡くなることができる病気なのです。仕事を大事にしていた渡瀬さんは、仕事に穴をあけるような無理な治療を選択していないことがうかがえます。2年前に肺がんで亡くなった愛川欽也さん(享年80)も、人気番組の司会を終えて1カ月後の訃報でした。渡瀬さんと同じ胆嚢がんだった大沢啓二さん(享年78)も、最期までテレビ番組で「喝」を入れています。

 多臓器不全は、がんの転移などで複数の臓器の機能がダウンした状態でがんの末期によく見られます。そこまでいかなくても、転移が見つかった時に体に負担の重い治療を行うと、それで体力や抵抗力が奪われ、かえってよくない結果を招くことも。渡瀬さんは恐らくそんな治療をせず、緩和ケアなどで痛みを取り除く治療にとどめ、緩やかなスローダウンを受け入れたのだと思います。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。