「多死社会」時代に死を学ぶ

肉体は死後どのように変化するのか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 家族がみとるベッドの枕元で、医師が3本指で脈を測り、脈の完全な停止を確認。聴診器を胸に当てて、心臓停止や目の瞳孔が散大したことを確認し、「ご臨終です」と告げる――。

 こんなシーンはひと昔前の話だ。いまは重篤患者に呼吸や心臓の動きを監視するモニター「呼吸心拍監視」装置がつけられ、精密医療機器で死亡を確認する。そのため、死亡確認の時刻にまず間違いは起こらない。それでも、「死んだ後になって、髪や爪が伸びた」といったオカルト的な話を聞く。本当だろうか。「それはあり得ないでしょうね」と一笑するのは、日本医科大学大学院研究科(法医学)の大野曜吉教授だ。大野教授は1978年、東北大学・法医学教室を皮切りに、一貫して法医学の道を歩んできた。

 しかし、死亡が確認された後でも、遺体は手足など肉体に触れると、まだ少し温かみを残している。大野教授の解説を交えて、心臓の停止から遺体に至る経過をたどってみよう。

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