「亡くなった人の鼻などに綿を詰めるでしょう。これは、体内から排出される水っぽいものを防ぐためです」(大野教授)
それでは、死後に生じる「死斑」は、どうして起こるのか。
血液の循環が止まると、血液は重力によって体の低い位置に沈下してしまう。これが死斑だ。死亡から数時間後、沈下した死斑が紫色になって、皮膚の表面に現れる。死後12時間ほどで最も強くなる。司法解剖などでは、死亡推定時刻を調べるのに、この死斑の変化を参考にすることがある。
司法解剖といえば、刑事ドラマのセリフでよく登場する「死後硬直」という医学用語もおなじみだ。
「亡くなった瞬間、筋肉が緩みます。穏やかになるというのか、それからジワジワと筋肉が硬直してきます」(大野教授)
なぜ、筋肉が硬直するのか。死亡して数時間経つと、前述した「ATP」が筋肉に収縮のためのエネルギーをゆっくりと放出しながら、次第に分解していく。この現象が「死後硬直」で、死後24~48時間続くという。
「多死社会」時代に死を学ぶ