医者も知らない医学の新常識

あおむけでの洗髪は注意が必要? 海外では訴訟沙汰も

頭を反らすならなるべくゆっくりと(C)日刊ゲンダイ

 美容院や一部の床屋さんで髪を洗う時には、頭の後ろにシンクを置いて、首を強く後ろに曲げる姿勢を取ります。「ちょっと怖いな」と感じている方も多いのではないかと思います。実はこの姿勢を取ることで、「脳卒中を起こす危険がある」という報告が複数あります。

 最初の報告は1992年に海外の専門誌に発表され、「美容院脳卒中症候群」という名前が付けられました。その後も「美容院に行ってから間もなく脳卒中になった」という報告が複数あり、海外では訴訟にもなっているようです。

 典型的な症状は、首を後ろに大きく曲げた瞬間に、「吐き気」や「めまい」などの症状が起こり、その後に手足が動かなくなるような脳卒中の症状に進行するというものです。

 なぜ、このようなことが起こるのでしょうか? 首を大きく後ろに曲げることにより、首の後ろを走っている椎骨動脈という血管の一部が折れ曲がり、血液の流れが悪くなるためです。その場所の血管に病気が何もない人であれば、ちょっとめまいがする程度で終わるのですが、お年寄りで動脈硬化が進んでいると、折れ曲がった血管に傷が付き、血管が裂けてしまったり、そこにあった血の塊が脳に飛んだりする危険があるのです。

 美容院で洗髪をする時には、なるべくゆっくり頭を反らせてもらいましょう。少しでも痛みがあったり、めまいを感じるような時は、そうした姿勢は取らない方が安全なようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。