年をとってから、夜間に尿意をもよおしてトイレに起きる回数が増えたという人もいるでしょう。こうした「頻尿」は、じつは心臓と大きな関係があります。
一般的には、朝起きてから就寝までの間に8回以上の排尿回数がある場合を「頻尿」と言います。就寝後に排尿のために1回以上(50歳以上は2回以上)起きなければならず、生活に不便を感じるケースは「夜間頻尿」と呼ばれます。
高齢になると、抗利尿ホルモンが減少したり、尿を濃くする腎臓の力が低下するため、排尿回数は増えていきます。しかし、極端に回数が増えてきた場合、中には病気によって引き起こされているケースがあります。
その多くは過活動膀胱によるものです。膀胱に尿がそれほどたまっていないのに、脳からの指令を待たずに強い尿意を感じる病気です。
また、前立腺肥大によって頻尿が起こっているケースも多く見られます。加齢とともに前立腺が肥大化し、尿道や膀胱が圧迫されて尿意をもよおすのです。前立腺肥大症は年齢とともに有病率が高くなり、50歳の30%、60歳の60%が該当するといわれています。この前立腺肥大症が、心臓疾患とリンクするケースがあるのです。
前立腺肥大症は、コレステロール値、とりわけLDL(悪玉)コレステロールの数値が高い人がかかりやすいことがわかっています。高コレステロールは心臓疾患の代表的な危険因子です。近年、日本の中高年は食生活や体質などによってコレステロール値が高くなってきていて、それが大きな要因になっている冠動脈疾患、大動脈解離、大動脈弁狭窄症といった心臓疾患が増えています。前立腺肥大症による頻尿がある人は、心臓疾患にも注意する必要があるのです。
■心不全の代表的な症状のひとつ
過活動膀胱や前立腺肥大症のように昼夜を問わず排尿回数が多いわけではなく、夜間頻尿だけがある場合は、心臓疾患が隠れている場合があります。夜間頻尿は、心不全の代表的な症状のひとつだからです。
心不全は、心機能の低下によって体内に血液が十分に供給されなくなった状態のことで、夜間頻尿の他にも、息切れ、疲労感、むくみなどの症状が表れます。
心臓の働きが低下していると、起立した姿勢で過ごす昼間は重力によって血液が下肢に停滞しやすくなります。心臓のポンプ機能が衰えているため、下肢から上半身まで十分に血液を戻せないからです。すると、下肢に水分がたまって足がむくみやすくなります。
その状態で就寝時に横になると、重力で下肢にたまっていた水分が循環して、腎臓への血液量が急激に増加します。すると尿がたくさん作られるようになり、夜間頻尿が表れるのです。心臓が悪いことで、結果的に夜間頻尿を招くケースがあるということです。
また、近年は、「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)が頻尿と関係していることがわかってきました。夜、寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。詳しい仕組みははっきりしていませんが、気道が塞がった状態で呼吸をしようとすると心臓に負担がかかり、その負担を軽減するために血管拡張と利尿作用があるホルモンが分泌されることで頻尿が起こるといわれています。
睡眠時は本来であれば副交感神経が優位になりますが、SASがあると交感神経が活性化します。そのため、心臓や血管に大きな負担がかかり、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、心房細動などが起こりやすくなることがわかっています。SASによって夜間頻尿が起こっている人は、心臓疾患を起こすリスクも高いということです。
このように、頻尿はさまざまな形で心臓と関連しています。とりわけ夜間頻尿が気になっている人は、念のため心臓の検査も受けておいた方がいいかもしれません。
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