天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

頻尿の陰に心臓疾患が隠れているケースがある

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 心臓の働きが低下していると、起立した姿勢で過ごす昼間は重力によって血液が下肢に停滞しやすくなります。心臓のポンプ機能が衰えているため、下肢から上半身まで十分に血液を戻せないからです。すると、下肢に水分がたまって足がむくみやすくなります。

 その状態で就寝時に横になると、重力で下肢にたまっていた水分が循環して、腎臓への血液量が急激に増加します。すると尿がたくさん作られるようになり、夜間頻尿が表れるのです。心臓が悪いことで、結果的に夜間頻尿を招くケースがあるということです。

 また、近年は、「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)が頻尿と関係していることがわかってきました。夜、寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。詳しい仕組みははっきりしていませんが、気道が塞がった状態で呼吸をしようとすると心臓に負担がかかり、その負担を軽減するために血管拡張と利尿作用があるホルモンが分泌されることで頻尿が起こるといわれています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。