明細書が語る日本の医療

男性の肺がん手術 50・60代で受けられる患者は50%以下

手術の80%以上は胸腔鏡手術(C)日刊ゲンダイ

 若年層では、新規患者数に対する手術件数の割合、つまり手術を受ける患者の割合が高くなっています。20代の患者のうち約95%、30代では60%が手術を受けています。手術に耐えられる体力があること、若年者のがんは進行が速いこと、手術以外に助かる治療がほとんどないことなどが理由と考えられます。

 しかし高齢になるほど、手術を受けない(受けられない)患者の割合が増えていきます。手術を受けた患者の割合は、50・60代で50%以下、70代で約40%、80代以上では15%に過ぎません。

■手術の80%以上は胸腔鏡手術

 全手術件数に対する胸腔鏡手術の割合は、全年齢で80%以上に達しています。胸腔鏡手術は「傷の回復が早い」「術後の痛みが軽い」「傷による後遺症がほとんど出ない」などのメリットがあるため、今日では肺がん手術の主流になっているのです。しかし、胸腔鏡の適用はいまのところ「ステージⅡまで」「がんが胸膜に浸潤していない」「太い血管を巻き込んでいない」などの条件が付いています。

 開胸手術はステージⅢまで可能といわれていますが、実際に受けられる患者は限られています。しかも、5年生存率で放射線と抗がん剤の併用治療と大差ないため、体力的に問題のある高齢者にはあまり行われていません。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。