「認知症」を知るための20週間

表情乏しい人が満面の笑み 旅行に行き“ミラクル”起こそう

積極的に外へ(C)日刊ゲンダイ

 ところが、行きの飛行機で最初のミラクルが起こった。

「機内食で出てきたレタスを、パリパリパリッと食べたんです。生野菜なんて長く食べていませんでしたから、『のみ込み、大丈夫?』と心配になったのですが……」(Nさん)

 夫は「おいしい」と満足げな表情。台湾では飲茶をはじめ、いずれの中華料理店でも旺盛な食欲を見せ、大きな春巻きもバリバリバリッといい音をさせて平らげた。

「『主人はどうせ食べられないから。残したものを食べよう』と取り皿に料理を取っても、主人がきれいに食べてしまい、私はほとんど食べられませんでした。夫のためのバナナを私が食べていたくらい」(Nさん)

 旅行から帰った後も、「食べる力」は継続。疥癬ダニに感染する前の食欲を取り戻した。

「みんなが笑顔の旅行先では、楽しい空気が伝わり食欲だって湧く。Nさんのご主人の件は、決してレアケースではありません」(丸尾さん)

 ミラクルはNさんに限らず、関節痛で歩くのにも苦労していた人がスタスタ観光地を巡ったり、表情が乏しくなっていた認知症女性が満面の笑みを見せたりもした。

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