Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

渡瀬恒彦さんのケース<下> 余命は短めに告知されることも

診断の1年半後に亡くなった渡瀬恒彦さん(写真中央)/(C)日刊ゲンダイ

 告知される余命は3カ月、6カ月、1年が一般的ですが、仮に6カ月だと判断されるようなケースでも、告知は3カ月になるかもしれません。それで、患者が“余命”を超えて延命したら、医師は家族から“名医”と喜ばれることはあれ、訴訟のリスクは確実に減るでしょう。

 実は若いころ、40代の進行した直腸がん患者に余命を告知した翌日、病室で首吊り自殺されたことがあります。今から思えば、医師としての未熟さが反省されます。ただし、患者や家族も余命を絶対視してはいけないことは間違いありません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。