有名病院 この診療科のイチ押し治療

【救急医療】自衛隊中央病院救急科(東京都世田谷区)

自衛隊中央病院救急科の竹島茂人部長
自衛隊中央病院救急科の竹島茂人部長(提供写真)
年間2000台の救急車に対応

 同院は、陸上自衛隊と防衛装備庁が共同使用している「三宿駐屯地」内にあり、1993年から地域住民の一般診療も行っている。特に力を入れているのは、2次医療圏(目黒区、渋谷区、世田谷区など)の救急対応だ。

 これまで年間300~500台だった救急車受け入れ台数は、昨年は2000台を超え、今年も昨年を大きく上回る台数を受け入れている。1年半前に自衛隊阪神病院副院長から赴任してきた同科の竹島茂人部長(顔写真)が言う。

「救急車の受け入れ台数が少なかったのは、それまで当科担当の常勤医師が1人しかいなかったからです。それを常勤医師3人プラスアルファとスタッフを増やし、多くの患者さんの受け入れが可能になりました。今後も人員を増やして、体制をより充実させていきたいと考えています」

■有事の際は大量受け入れ施設へ

 昨年の救急車の月間応需率は、高いときで92・8%、平均では86・8%。東京都の2次救急医療機関(245施設)の平均応需率は約75%なので、常に平均を上回る。ICU(集中治療室)が8床あり、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な患者の受け入れも可能だ。

 同院は、全国の自衛隊地区病院(15院)からの自衛隊員の患者を受け入れる最終後送病院とされており、2009年に新築され、有事(テロや大規模災害など)の際には大量の一般傷者を受け入れられるさまざまな設備が整っている。

「救急科の搬送口は除染室になっていて、6台のシャワーがあります。ここで化学物質などに汚染された患者さんを洗浄できます。部屋の空調は陰圧になっていて、有害物質が院内や屋外に漏れることはありません。初期治療する初療室も普段は2床ですが、何かあれば5床以上に増やせます」

 病院入り口内外の広々としたエントランスは、患者を重症度で分類する「トリアージスペース」として機能する。外来の待合室の長椅子は簡単にベッドに変えることができ、院内の壁の随所に非常事態用の「酸素」「吸引」「電源」が取れるようになっている。これらの設備を使うことで、通常500床あるベッドが非常時には倍増できるという。

「病院の長周期免震システムは、震度6~7を3~4程度に減弱できます。停電になっても、通常の約70%を自家発電でまかなうことが可能。駐屯地なので独自の補給系統をもっていて、備蓄に困ることはありません。屋上のヘリポートは都内の病院で唯一、大型ヘリの降着ができる面積と強度があります」

 自衛隊が使う大型ヘリCH―47は「チヌーク」と呼ばれ、座って55人、担架で24人を搬送できるという。年1回実施している首都直下型地震などを想定した「大量傷者訓練」では、大型ヘリを使った訓練が行われているという。

「陸上自衛隊衛生学校も隣接しており、多くのスタッフが衛生科隊員なので、非常事態の際はすべての患者さんに適切に対応できる能力をもたせています。それをベースに、平時は地域の救急医療を支えていきたいと思っています」

 同科の設備は万全。さらに救急医療態勢を充実させ、より地域の救急医療に貢献できる病院を目指すという。

■データ
1956年開院。全国の自衛隊地区病院(15院)からの患者を受け入れる最終後送病院。
◆スタッフ数=常勤医師3人、非常勤医師1人、その他各診療科医師
◆年間患者数(2016年)=5531人
◆年間救急車受け入れ台数(同)=2134台