がんと向き合い生きていく

死亡者数が最多 肺がんを減らすにはまだまだ時間がかかる

都立駒込病院名誉院長・佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 それだけ、検診が浸透していないと考えられます。

 私の先輩医師も、たくさん肺がんで亡くなりました。みなさん愛煙家でした。長く親しくお付き合いいただいたRさん(男性・74歳)は、お会いした時はいつも灰皿に吸い殻がいっぱいでした。仕事を辞めるまでは、がん検診を毎年受けていましたが、その後は受けていませんでした。

 5カ月ほどときどき咳き込むことが続き、下肢がむくんで病院で診察を受けた時は、担当医から「胸部に径10センチの腫瘤があり、肺がんです。手術などのがん治療はもう無理な状態です」と説明されました。

 ある日、Rさんから電話がかかってきました。「自分の人生に悔いはないと思っています」と言いながら、それでも「2人の孫が大学、高校に入学する来春までは頑張らなければ」と話されていました。その心中はいかばかりであったでしょう。そのようにおっしゃってはいましたが、無念の気持ちが伝わってきました。今年は、Rさんが亡くなって2年目の春になります。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。