手の指や手首の関節が痛くなる「腱鞘炎(けんしょうえん)」。手をよく使う職業の人に起こりやすい。たとえば、作家、漫画家、演奏者をはじめ、パソコンのキーボード操作が多い人、家事をする主婦や飲食業の人、保育士や介助者など。テレビゲームでも、やり過ぎれば発症する。
腱鞘炎は痛む場所によって「ばね指」と「ドケルバン病」がある。山田記念病院・整形外科(東京都墨田区)の長谷川伸医師が言う。
「ばね指は、手の指の手のひら側に起こります。最初は指を動かしたときの違和感やこわばりで発症しますが、次第に第2関節を曲げたり伸ばしたりすると、ひっかかるようになって痛みを生じます。親指や中指に起こることが多い」
ドケルバン病は、親指の使い過ぎによって親指の甲側の手首に起こる。親指を手のひらの内側に入れて握りこぶしをつくり、手首を小指側に曲げると痛みが出るのが特徴だ。どうして痛みが出るのか。
「関節は筋肉によって動きますが、その力を伝えているのが腱です。腱は骨と並行して走っていて、ずれたり浮いたりしないように骨の所々に付いている『腱鞘』というトンネルの中を通っています。腱鞘炎は、その腱鞘や腱の一部に炎症が起こり、肥厚して通過障害が生じることでひっかかって痛みが出るのです」
発症は更年期や周産期の女性に多いが、これは腱の修復を助けている女性ホルモン(エストロゲン)の分泌の変化が影響していると考えられている。
では、腱鞘炎が疑われた場合、どのような対処を心がけた方がいいのか。
「とにかく、痛みが出ないように手の使い方を工夫して、使い過ぎに注意することです。テーピングやサポーターをして手の過度の動きを控える。パソコン作業であればアームレストなどを使うのがいいでしょう」
市販薬では、「インドメタシン」や「フェルビナク」といった消炎鎮痛成分の入った外用薬(湿布や塗り薬)を使ってみるのもいい。ただし、手の使い過ぎが原因なので、安静を保てなければあまり効果は期待できないという。
「安静や外用薬で3週間、様子を見ても、痛みやこわばり、ひっかかりの症状が治らない場合は、整形外科でステロイド注射などの治療を受けた方がいい。あまり長い期間放置すると、腱鞘炎は治っても関節そのものが拘縮(固まる)してしまい、指の可動域制限などの後遺症が残る可能性があります」
受診までの「応急処置」