橋本テツヤの快適老齢術

なったつもりで元気を取り戻す

“つもりつもれば”…といったところか
“つもりつもれば”…といったところか(C)日刊ゲンダイ

「尊敬する人物は誰ですか?」と聞かれることがある。僕は「自分です」と答える。「尊敬する歴史上の人物は?」と問われたら徳川家康か豊臣秀吉あたりを答えるかもしれないが、そうでない場合は自分を尊敬していると言う。驕り高ぶっているわけではない。自分が一番好きで、自分の存在価値をそれなりに認めているからだ。

 人は誰でも自分が好きなはずだが、年齢を重ねてくると、体の不調から今までできたことができなくなってくる。そうなると自分がイヤになり、悪い方向ばかりを考えてしまう人がいる。だから自分をもっと好きになることだ。

 自分の最大の理解者は自分しかいないと自覚すると、自信を取り戻す。心理学で「同一化」がある。アクション映画を見た後、強いヒーローになったような気分になったことがあると思うが、他者の行動を自分の体験であるかのように思ったりすることを意味する。

 大相撲春場所で、負傷した稀勢の里が逆転優勝して多くの国民が感動した。テレビ観戦した年寄りたちも、自分が稀勢の里になったつもりで全身に力を込めて応援した。実は、この「なったつもり」が人を元気にさせるのだ。「大金持ちになったつもり」「イケメンになったつもり」「俳優になったつもり」等々。なったつもりは自由で楽しい。

 アインシュタインは「想像力は知識より大切だ」と述べている。知識には限界があるが、想像力は限界がないという。ならば総理大臣や国会議員になったつもりで、自分の考えを主張するのも想像の中でなら可能だ。恋のときめきを忘れてしまった人は、キムタクになったつもりで美人と恋をする自分を想像するのも自由だ。老妻に幻滅を感じていたら、若々しい肉体の美人妻を想像して、まぶたにその姿を投影させる。五感を駆使してバーチャルリアリティーの世界をつくり出すのだ。

 コンピューターのバーチャルリアリティーではないが、想像力で美人妻を描くことはできる。描いたらそのまま目をつぶって、描いた人物が脳裏から消えないうちに老妻の手を握る。久しぶりにその気になるかもしれない。

 だが、妻のほうも美人妻になったつもりでなければ現実に引き戻される。もっともその前に、男に精力があるかどうかだ。精力には抗酸化作用のある栄養素が必要で、想像だけで精力は生まれない。精力がなければ美人妻とやったつもりだけになってしまうが、やったつもりが楽しければそれでいいのだ。もともと想像上の美人妻なのだから。

橋本テツヤ

橋本テツヤ

ジャーナリスト、コラムニスト、メンタルケア心理士、肥満予防健康管理士。著書多数。近著に「昭和ヒット曲全147曲の真実」(KADOKAWA)がある。全国各地で講演活動も精力的に展開中。