明細書が語る日本の医療

胃がん検診受診率が高いエリアは内視鏡手術件数が多い

本当の意味で早期発見につながる
本当の意味で早期発見につながる(C)日刊ゲンダイ

 会社や自治体が行う胃がん検診は40歳から。しかし受診率は必ずしも高くありません。胃がん検診は早期発見を目的としたものですから、受診率が上がれば、ごく初期の胃がんといわれる上皮内がんの発見も増えるはず。結果として胃がん手術全体に占める内視鏡の割合も高まるはずです。

 NDBオープンデータを基に、各都道府県の内視鏡手術の割合(2014年度)を計算しました。また、厚労省が公開している別のデータから、胃がん検診の受診率(2013年、40歳以上、男女計)の数字を引いてきて、表にまとめました。

 内視鏡の割合がもっとも高いのが宮城県、全胃がん手術の約6割を内視鏡が占めています。一方、最下位は沖縄県で、4割に達していません。宮城県の胃がん検診率は48.8%で全国2位。対する沖縄県の検診率は39.5%で16位でした。

 表をざっと見渡すと、やはり胃がん検診率の高い県のほうが、内視鏡手術の割合も高い傾向にあることが分かります。京都府や長崎県のように、検診率がかなり低いのに内視鏡が高い県もあり、はっきりと相関しているわけではありません。しかし、検診率1位の山形県や3位の新潟県なども、内視鏡の割合が高い県に入っています。また地域的には東海3県や北関東の各県で、内視鏡・検診率ともに低くなっています。

 しかし胃がん検診の大半は、いまでもバリウム検査です。発泡剤と一緒に飲むため検査中はゲップが出るのを必死にこらえなければならず、検査後は下剤を使ってバリウムを排泄しなければならないなど、決して楽な検査ではありません。放射線(エックス線)もかなり浴びるため、それによる発がんを心配する声すらあるほどです。

 それでも、胃のバリウム検査は日本で開発され、いまや放射線技師を含め大勢の人間が関わっているなどの事情から、やめるにやめられなくなっているのです。しかも、検査の感度は必ずしも高くありません。とくに上皮内がんを見落とす確率が高いともいわれています。

 どうせ苦しい思いをするなら、いっそ内視鏡検査を受けたほうがマシというもの。上皮内がんを含めて見落としが少なく、本当の意味で早期発見につながるからです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。