当事者たちが明かす「医療のウラ側」

予備校が授業・卒業判定に関与する薬学部教育のデタラメ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 薬学教育評価機構が6年制の薬学教育評価を行い、関西のある大学の薬学部が“不合格”になったと聞きました。

 11大学中10大学は退学・留年者が多いなどいくつかの問題があるものの合格だったそうですが、関西のある大学は“重大な問題がある”として総合判定が保留されたそうです。

 問題となったのは「カリキュラム編成」「問題解決能力を醸成するための教育」「成績評価・鍼灸・学士課程修了認定」「教員組織・職員組織」「自己点検・評価」の5項目です。

 とくに問題にされたのが、国家試験受験予備校への依存です。6年次の講義を予備校に依頼して行っているほか、実質的な卒業要件である試験が、予備校が行う模擬試験の結果を考慮してなされていたそうです。

■それなのに国家試験合格率は40%台

 驚くのはそこまで国家試験のための準備をしているにもかかわらず、この大学の薬剤師国家試験の大学別合格率は40%台ソコソコ(平均は71.58%=平成29年発表)で、底辺にあることです。

 医学部でも国家試験対策を行っている大学はいくらでもあります。しかし、それが大学の正規の授業を圧迫しているばかりか卒業判定にまで影響されているなんて聞いたことがありません。

 薬剤師は、医師、歯科医師とともに6年制教育となり、より専門的な知識を得たうえで国家試験に臨み、それをパスすることで人の命を預かる医療の一翼を担うことになります。しかし、大学にしても学生にしても、その覚悟が乏し過ぎると言わざるを得ません。

 薬学部の標準修業年限卒業率(規定の年数で卒業する学生の比率)は2015年で71.2%。退学率は9.3%と、7.7%の歯学部や、1.6%の医学部に比べて飛び抜けて高い。これも、能力・意欲に問題がある学生がいかに多いか、ということの証拠ではないでしょうか?

 薬剤師には処方箋の内容に対して医師に問い合わせできる「疑義照会」という権限があります。しかし、こんな薬学部教育の実情を知ると、「疑義照会」にも素直に耳を傾けるのがバカバカしくなってしまいます。