あの話題の治療法 どうなった?

かつては子供の定番だった「扁桃・アデノイド手術」は今

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「かつては子供の定番手術のひとつでしたが、最近は抗菌薬で抑えられるため以前ほど手術数は多くない印象があります。親御さんも扁桃もアデノイドもいずれ縮小することがわかってきているので、全身麻酔のリスクまで冒して手術をしようとは思わなくなってきているのでしょう」

 こう言うのは都内でクリニックを開業している小児科医師だ。

 アデノイドとは、のどちんこの裏側にあるリンパ組織で咽頭扁桃とも言う。6歳ごろをピークに増大し、その後少しずつ縮小する。人によっては鼻や耳、喉に慢性炎症を起こす。

 扁桃は口蓋扁桃とも呼ばれ、のどちんこの両横にあるリンパのこぶを指す。こちらも成長するにつれ縮小するが、人によっては大人になっても大きいままのこともある。

「扁桃やアデノイドの肥大は、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因にもなるため、放っておくと睡眠中に分泌されるホルモンが十分でないため、成長に影響が出るともいわれています。ほかに、蓄膿症や滲出性中耳炎を悪化させたり、長引かせたりします」(前出の小児科医)

 炎症で鼻呼吸がしづらいため、頭が重く、集中力が欠け、アデノイド顔貌といって、口をポカンと開けて、顔の筋肉がゆるみ、間延びした顔つきになるとの指摘もある。

 ただし、切除手術は扁桃やアデノイドが大きいだけでは行われない。いびきや睡眠時無呼吸症候群や滲出性中耳炎や扁桃炎が通常の治療では治りにくく、その原因が扁桃やアデノイドの肥大であることがハッキリしたときに検討される。

■中学受験組にはいまも人気

「小学校低学年の健診後に診療所に駆け込んで来られるお母さん方は多い。学校健診ではきちんとした問診が行われず、“扁桃腺やアデノイドが大きい”との所見だけが書類に書かれるからです」(都内の耳鼻科医)

 しかし、実際に診察すると手術の適応となる子供は多くないという。

「ただ、中学受験を目指すような教育熱心なご家庭のお子さんは夏休みなどを利用して手術されるようです。思春期になれば扁桃炎の回数が減るとはいえ、受験勉強期間に集中力が欠けるのは困るということでしょう」(前出の耳鼻科医)