Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【北村総一朗さんのケース】前立腺導管がん ネットの「治療法ナシ」に踊らされてはいけない

4年前に前立腺がんが見つかった(C)日刊ゲンダイ

 実は3年前、発明家のドクター中松さんも、このがんを発症。組織の悪性度は8でした。悪性度の分類は2~6が「低」、7が「中間」、8~10が「高」。性質の悪いタイプでした。

 自らも医学博士の中松さんは手術や放射線などの治療の可能性を探り、いろいろな医療機関を受診。希少がんであるがゆえ、確立された治療法がないといわれることが相次ぎ、私の外来に来られたのです。

 結論からいうと、私の提案は待機療法でした。「がんを治療し過ぎて副作用や後遺症が出てつらい思いをすることがあります。創造ができなくなっては、元も子もないのではありませんか」とお話ししましたが、決して消極的な選択ではありません。

「悪性度が高いのに、なぜ」と思われる人もいるでしょう。中松さんは、テレビなどの前では元気でしたが、体力などは年相応に低下。過剰な治療は、体の負担と思われたのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。