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【脊椎脊髄病外来】第三北品川病院整形外科(東京都品川区)

第三北品川病院整形外科の加藤義治主任教授
第三北品川病院整形外科の加藤義治主任教授(提供写真)
専門医5人ですべての治療法に対応できる体制に

 地域の急性期病院である同院は、昨年4月に診療体制を一新させた。

 中でも大きく変わったのは整形外科。東京女子医大・整形外科の加藤義治主任教授(顔写真)を院長に迎え、同大から他2人の脊椎脊髄疾患の専門医が赴任。5人体制(うち日本脊椎脊髄病学会指導医4人)で「脊椎脊髄病外来」を立ち上げた。

 同外来を担当する加藤院長が言う。

「脊椎脊髄病にはさまざまな疾患がありますが、症状で多いのは神経が圧迫されて起こる『手足のしびれやマヒ』『歩きにくくなる』などです。当外来では保存療法から最先端の手術まで、すべての治療法に対応できる体制をとっています」

 得意とするのは、専門医でも嫌がる「頚椎症性脊髄症」や「リウマチ脊椎症」などの難易度の高い手術。スタッフに大学病院で重症患者を中心に数多くの手術を行ってきた豊富な実績(加藤院長は5000例以上)があるからこそだ。

 もうひとつの特色は、月2回、土曜日に行われている「側弯症」の特診だ。

「側弯症は脊椎が横にカーブする疾患で、思春期の女子に多く、軽症を含めると有病率は100人に1人といわれます。原因不明の特発性が約8割を占めます。このような“脊柱変形”は、加齢による『変性側弯』『神経筋性側弯』『先天性側弯』『神経線維側弯』などでも起こります。ですから、脊柱変形全般の診療にも特徴を出していきたいと考えています」

■夏からは最新機器を使った側弯手術がスタート

 現在、側弯症の治療を受けているのは、5~18歳の約30人。

 治療は、弯曲が25度以上45度未満では装具をつけて矯正し、弯曲が45度以上になると手術を検討する。背骨をスクリューとロッド(金属製の棒)で固定して矯正するのだ。手術の適応は全体の1割程度という。

「今年の夏休みシーズンから最新機器を使った手術を始める予定です。それは『O―arm(オーアーム)ナビゲーションシステム』といって、手術中にリアルタイムで透視画像や3D画像を撮影できる装置です。この機器を使うことで、これまで以上に正確な位置を確認しながら手術を行うことができるのです」

 側弯症の手術では、スクリューを10本くらい挿入する必要がある。

 従来の手術では、1本挿入するたびにポータブルエックス線装置で確認していたので、医師や看護師の被ばく量も多かった。それが、最新機器では2~3回の撮影で済む。医療者は被ばくすることなく、患者の被ばく量も少ないという。

「O―armを導入したのは今年3月なので、当外来での使用は、いまのところ頚椎の固定手術の3例です。しかし、東京女子医大では4年前に導入しているので、スタッフは既に扱いに慣れています。椎弓根スクリューを挿入するすべての脊椎手術などに使用できるので、今後は適応となる脊椎脊髄病や骨盤骨折などの手術にもどんどん活用していくつもりです」

 国内でO―armを導入する施設は、現在50カ所弱。十分に稼働している施設はまだ少ないという。

 同病院では、大学病院と同等の「安心・安全・確実」な治療が受けられるというわけだ。

<データ>
 公益財団法人河野臨床医学研究所の付属3医療施設のひとつ。
◆整形外科スタッフ数=常勤医師6人、非常勤医師4人
◆年間初診患者数=約4000人
◆年間手術件数=約500件(うち脊椎脊髄手術約150件)