がんと向き合い生きていく

胃がんの治療法は「内視鏡と手術」どちらを選ぶべきか?

都立駒込病院名誉院長・佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 仮にMさんが手術を受けるとなると、がんが胃の上部にあるから胃全摘、つまり胃はなくなります。胃がなくなるので、これから先は胃がんになることはありません。

 ただ、患者さんによりますが、手術後に胃がある・なしでは、食生活が変わってきます。胃がないと食物が一度に腸に流れ込むようになり、ダンピング症候群という不快な症状が出ることがあります。食後に汗をかいたり、動悸が表れる場合もあります。そうした患者さんは、よく噛んで食べる、ゆっくり食べる、1回の食事量を調整するなど、いろいろな工夫で克服されているようです。個人差が大きいのですが、手術後の食事の取り方はとても大切です。

■担当医に「先生の家族ならどうするか」を尋ねてみる

 Mさんの問いに対し、「がんでも早期がんで良かったね。Mさんは糖尿病があるし、胃はあった方がいいと思う。いつかまた胃がんになるかもしれないけれど、定期的にチェックしてもらえば……」と言いかけると、Mさんは「分かった。内視鏡治療にするわ!」と即決でした。私は「ご家族みなさんで相談されてから……」と答えましたが、結局、2週間後に入院して内視鏡治療を受けることになりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。