明細書が語る日本の医療

前立腺がん手術数 2006年に保険点数が引き上げられ急増

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 手術件数は06年を境に一気に増えています。実はこの年の診療報酬改定で、前立腺がん手術の報酬が大幅に引き上げられたのです。医療も商売ですから、病院としては安い手術は乗り気がしないし、値段が上がればやる気が出るというもの。それが如実に数字に表れているわけです。

■ただし、2年後からは横ばいの1600件

 とはいえ、不要不急の手術は極力避けたい気持ちも働きます。まして必要のない手術で「失敗」でもしたら、たちまち医療訴訟になりかねないご時世です。そういう事情もあってか、08年から現在に至るまで手術件数は1600件(年間換算で約1万9000件)前後にとどまっているのです。

 患者がこれだけ増えても手術件数はほぼ横ばい。放射線治療や抗がん剤が効くといっても、手術件数がまったく伸びないのは奇妙な話です。実は現場の医師たちが「前立腺がんの多くは切らない方が長生きできる」と考えているのが、本当の理由なのかもしれません。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。