GW旅行で気をつけたい 「海外3大感染症」を専門医が解説

 ゴールデンウイークは海外で過ごすという人も多いのではないか。楽しむのは大いに結構だが、旅行先で病気になったら、せっかくの旅行も台無し。とくに気をつけたいのが感染症で、厚労省もHP上に「ゴールデンウイークにおける海外での感染症予防について」と警告文を掲載している。海外ではどんな感染症に気をつけなければならないのか? 東京医科大学病院・渡航者医療センター教授の濱田篤郎医師(円内)に聞いた。

■ジカ熱

「まず、気をつけなければならないのは蚊が媒介する感染症です。マラリア、デング熱、黄熱などがありますが、要注意なのはジカ熱です」

 昨年のリオ五輪で話題になったウイルス感染症で、世界保健機関(WHO)は昨年11月に緊急事態の終息を宣言したが、油断は禁物だという。

 2007年ごろから南太平洋の島々で流行が始まり、15年に米国大陸で、16年には東南アジアで流行が確認されている。

「感染者の2割が2~12日の潜伏期間を経て、皮膚の発疹やかゆみ、結膜炎などの症状が表れ、患者の3~6割が発熱します。通常は1週間で回復しますが、まれにギラン・バレー症候群と呼ばれる神経疾患を合併することがあります」

 しかし、この病気の一番の問題は、生まれてくる子供への影響だ。

「妊婦が感染すると胎児に小頭症などの障害を起こす可能性があります。妊娠初期での感染はもちろん、妊娠中期以降の感染でも胎児への影響が出る可能性があります」

 ジカ熱ウイルスはセックスでも感染するため、妊婦だけでなく男性の感染にも注意が必要だ。

「実際、このウイルスに感染した男性とのセックスで女性がジカ熱に感染した事例が報告されています。このウイルスは精液のなかで6カ月近く潜伏するため、厚労省はHPで感染した可能性のある男性には半年間はコンドームを着用するのが望ましいと呼びかけています」

 つまり、感染の可能性がある男性は半年間、子づくりのためのセックスができない、ということか。

「蚊による感染というと、日本脳炎をイメージして“夜の蚊が危ない”と思うのでしょうが、ジカ熱を感染させる蚊は昼間に活動します。昼間の蚊にも気をつけましょう」

■鳥インフルエンザ

 動物からの感染症は狂犬病やヒトコブラクダからうつる中東呼吸器症候群(MERS)などがあるが、中国では鳥インフルエンザが流行している。

「2013年3月末から中国沿岸部を中心にH7N9鳥インフルエンザが報告され、今年の2月22日までに1223人が発症し、少なくとも380人が死亡しています」

 潜伏期間は1~10日で、高熱と急激な呼吸器障害を起こし、発症から11日で死亡するケースが多い。

 H5N1と呼ばれる鳥インフルエンザは今年2月16日までに世界16カ国で865人が発症、うち452人の死亡が確認されている。

「海外では鳥との接触を避けて、むやみに触らないこと。生きた鳥が売られている市場には近寄ってはいけません」

■麻疹

 感染力がインフルエンザの10倍以上といわれる麻疹(はしか)にも注意が必要だ。

「昨年9月に海外で麻疹に感染した日本人が関西空港から東京方面に旅行して、多くの2次、3次感染者を出しました。感染症は“被害者が加害者になる病気”であることを忘れてはいけません」

 日本人は麻疹を軽く考えがちだが、WHOによると2015年には世界中で13万4200人が死亡している。

 毎日367人、毎時間15人が麻疹で死亡している計算だ。

 アジアでは、モンゴル、中国、マレーシア、インドネシア(バリ島)など、欧州ではイタリアでの報告が目立つという。

 では、海外で感染症から身を守るには、どうすればいいのか?

「麻疹のように予防ワクチンがある場合は、渡航前に接種すること。人ごみはできるだけ避ける。手洗いは必須です。ただ、手を洗える場所が多くない国もある。持ち込めるかを確認のうえ、消毒ハンドジェルを持っていくのも手です」

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