天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

糖尿病性心筋症は動脈硬化が進んでいなくても発症する

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病が心臓疾患の重大なリスク因子であるということは、これまでたびたび取り上げてきました。糖尿病の人は、そうでない人に比べて男性で2倍、女性で3倍も心筋梗塞の発生頻度が高く、死亡率も1.5~3倍ほど高くなるという報告もあります。

 高血糖の状態が続くと全身の血管がダメージを受けます。それが長期にわたると血管がボロボロになり、動脈硬化が促進されます。また、血糖が高いとコレステロール値が高くない人でも血管内にプラークができやすくなります。プラークが剥がれると修復するために血小板が集まって血栓を作り、それが動脈硬化で血流が悪くなっている冠動脈に詰まって、心筋梗塞や狭心症を引き起こすのです。

 しかし近年、高血糖による動脈硬化とは関係なく、糖尿病そのものが心臓疾患の要因になるケースが注目されています。「糖尿病性心筋症」と呼ばれるもので、冠動脈の状態がそれほど悪くなくても、心臓の筋肉がどんどん傷んでしまって心機能が低下する病気です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。