独居を楽しむヒント

データが後押し 長生きしたければ“一人飲み力”を養うべし

 オヤジ、ちゃんと暮らしているだろうか……。実家で暮らす親を心配してGWに帰省する人は少なくないだろう。高齢者白書によると、65歳以上の高齢者は、2割が単身世帯だ。この30年で倍増した。その分、子供との同居は7割から4割に減っている。独居の高齢者は大きな社会問題で、暗いイメージがつきまとうが、中には元気に明るく自立している人もいる。元気なハッピーロンリーの秘密を探る。

■三浦敬三氏は晩年まで自分で料理

 3度のエベレスト登頂で知られる登山家の三浦雄一郎さん(84)の父・敬三さんは、2006年に101歳で亡くなる直前まで一人で暮らしていた。最期までスクワットなどで体を鍛え、スーパーに通って料理を作る。独居の孤独さとは無縁の生活だった。

 三浦父子のメディカルサポートを担当する白澤抗加齢医学研究所の白澤卓二氏が言う。

「高齢で独居でも、元気に自立している人は、決まって足腰が強い。階段の上り下りを嫌がりません。むしろ、そういう段差のある生活を余儀なくされるようなエリアに住んでいたりします。敬三さんも外出をいとわず、買い物がてら店の人たちとおしゃべりをします。そうやって見聞きした情報が自分に役立つと思えば、すぐに取り入れていました。数学的には一人の食事でも、精神的には周りの人とのつながりを持った食卓でした」

 その生活ぶりにこそ、元気なハッピーロンリーになるヒントがある。誰かと一緒に食事をする「共食」と一人で食事をする「孤食」は、社会とのかかわりをチェックする指標のひとつ。東京医科歯科大のグループは、そこに着目。65歳以上の自立した約7万人を3年間追跡し、死亡リスクを調査している。

 その結果が面白い。一人暮らしで「孤食」の男性は、妻や子供たちの家族と同居で「共食」の男性に比べて、死亡リスクが1・2倍だった。ところが、一人暮らしでも「共食」の人は、家族同居で「共食」の人に比べて死亡リスクが低い傾向がみられたのだ。どういうことなのか。作家で、米山医院院長の米山公啓氏が言う。

■アフター5で飲むスタイルにも当てはまる

「東京医科歯科大のデータが示しているのは、社会性の違いです。たとえば、一人暮らしの人が一人で飲み歩く姿は一見、孤独のようでも、店で常連客や店員とのコミュニティーを築けていれば、社会性は十分。それに比べて、家族同居とは名ばかりで、どこに出掛けても直行直帰、会話もないような夫婦の食卓は社会性に欠けます。必ずしも家族形態が重要ではないということです。三浦敬三さんの事例は、まさにそういうことを示しています」

 アフター5で飲むスタイルにも当てはまるだろう。複数で店に繰り出しても、毎回毎回メンツも店も同じ人は、相手がいなければ飲みに行けないから家族同居がリスクになるタイプ。社内で「あいつは寂しいヤツ」と揶揄されても、一人飲みの選択肢がいくつもあるタイプは、ハッピーロンリーといえるだろう。

「現役のうちから一人飲み経験を重ねておくといい。それが、独居でもハッピーロンリーになる近道です」(米山氏)

 母に先立たれた父親が、ショックでふさぎ込んでいるなら、「頑張れ」と言葉で勇気づけるより、父親が好きそうな赤ちょうちんを探して、連れ出す方がよさそうだ。