肺がんや結核の疑いも 止まらない初夏の空咳に潜む重大病

原因はホコリやカビだけじゃない
原因はホコリやカビだけじゃない(C)日刊ゲンダイ

 風邪やインフルエンザ、スギ花粉症の流行期は過ぎたというのに、咳やくしゃみ、鼻水が止まらない。大変な病気を抱えているのではないか。そう不安に思う人もいるかもしれない。何が原因なのか。医師系人気ブログの著者で「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長に話を聞いた。

■自律神経の乱れが関係している場合も

「今の時季、咳やくしゃみ、鼻水の原因として考えられるのはアレルギーです。春から初夏にかけて風の強い日が多く、ホコリが舞いやすい上、5月中はスギ花粉に続いてヒノキ花粉が飛ぶ。さらには中国大陸から黄砂やPM2・5などが飛んでくる。これらの要因が重なって、空咳やくしゃみに悩まされる人が多いのです」

 カビを吸い込むことで空咳が出る場合もある。

「カビは『真菌』と呼ばれる微生物で、一定の温度と湿度があればどこにでも発生します。カビの胞子は空気中に漂っていて、少しくらい吸い込んでも問題ありませんが、何度も吸い込むことによって体内に抗体ができてアレルギー反応を起こし、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、気管支喘息を引き起こすこともあります」

 今の気温や気圧の変化に自律神経がついていけず、咳が出ることも少なくない。

「自律神経は、血管を縮小・拡張することで汗をかいたりして体温を一定にするなど、体内の恒常性を保つ働きをしています。その自律神経が目まぐるしい環境についていけなくなることで、咳やくしゃみ、鼻水を出す場合があります。風邪なら黄色のドロドロした鼻水が出ますが、この場合は透明でサラサラしています。ウイルスや細菌などが原因なら目のかゆみや充血も出ますが、それもない、熱もない、気温差が激しいときに咳やくしゃみがひどくなるというケースは、自律神経が関係する咳かもしれません」

■空咳をともなう重大病「COPD」「肺がん」「結核」

 怖いのは感染症による空咳だ。中高年がお世話になっているリウマチやがんなどの薬の中には、免疫を抑制するものが多い。以前に比べて感染症にかかりやすくなっていることも気にした方がいい。

「マイコプラズマ肺炎はここ数年、夏にかけて流行が見られます。小児や若い人の肺炎で、『肺炎マイコプラズマ』と呼ばれる病原体により引き起こされます。発熱と倦怠感、頭痛が見られ、乾いた咳が出ます。飛沫感染で広がり、潜伏期間は2週間ほどです。細菌で感染する百日咳も大人の患者が増えているので注意が必要です」

 咳が1カ月以上も止まらないようなら咳喘息だけでなく、COPD、肺がんや結核などの重大病を疑うべきだ。

「咳喘息は気道の粘膜に炎症が起こって敏感になり、冷気や湯気といったちょっとした刺激でも激しく咳き込む病気です。咳は夜間や早朝に出やすい。放置すると気管支喘息になる可能性があります」

 COPDは炎症で肺の中の肺胞が壊れていく病気。いったん壊れた肺胞は元に戻らない。

「肺がんによる空咳は、がんによる炎症が気管支や肺、横隔膜を刺激して起こり、結核の咳と同じようにゴホゴホと痰が混じった湿った咳が長く続くのが特徴です。気になる人は検査を受けた方がいいでしょう」

 意外なことだが薬による空咳に苦しむ人もいる。

「血圧を下げる薬の中には、副作用として喘息のような咳が出る場合があります。薬を替えれば数日で咳が止まりますので、心当たりのある人は主治医と相談するといいでしょう」

 ちなみに太った人の長引く空咳は、胃液が逆流して喉頭部まで達する逆流性食道炎であるケースも多い。

「胸焼けや酸っぱいものが込み上げてくる『呑酸』といった症状や、過食や食後に横になると咳が出るなら、逆流性食道炎を疑いましょう」

 空咳が出たからといって慌てる必要はないが、“熱や倦怠感が伴う”“2週間以上続く”という場合は医師に相談することだ。

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