独白 愉快な“病人”たち

横森理香さんは「更年期障害」とどう向き合ってきたのか

横森理香さん
横森理香さん(C)日刊ゲンダイ

 33歳で大きめの子宮筋腫が見つかって以来、経血量が多い月経過多に苦しんでいました。40代後半からは過長月経になり、普通なら1週間前後で終わる生理が1カ月以上続いたりしていたのです。その上、更年期を迎えて「口角炎」「飛蚊症」「消化不良」「片頭痛」「ホットフラッシュ」「ぎっくり腰」……。若い頃には考えられなかったことが次々に起こりました。もちろん、現在も進行形。現状は5カ月に1回のスローペースで生理がやってくる感じで、「そろそろ閉経かな」という状況です。

「更年期障害」は、「閉経前後5年間の心身の不調」といわれています。その症状は人それぞれで、自覚がないほど軽い人もいれば、日常生活がままならないほどの症状に悩み苦しむ人もいて、年齢にも幅があります。一般には40代後半から50代ですが、30代から始まる人もいるようです。

 私の場合、最初の変化は42歳での中途覚醒でした。いわゆる「不眠」というやつです。ベッドに入っても2~3時間で起きてしまい、そこからもう眠れない。夜だけ皮膚に発疹が出て、かゆくなる異常も表れました。

 アンチエイジングクリニックでホルモン値を調べてもらうと、その時は正常値で「更年期ではない」との診断でした。でも、自分としては“きてるな”と思いましたよ(笑い)。いま思えば、プレ更年期だったのでしょう。勧められた重金属デトックス(排出)によって皮膚のかゆみは止まりましたが、訳もなく落ち込んだり、風邪がなかなか治らないといった症状が始まりました。ただ、このプレ更年期はハーブなどの自然療法で乗り切ったのです。

 そして51歳の夏、生理時に卵巣嚢腫が2度破裂して、大学病院で腹腔鏡による右卵巣摘出手術を受けました。ここで言いたいのは、手術ではなく手術前に打った「リュープリン」という女性ホルモンを止める注射によって、「疑似閉経」を経験したことです。

 生理が止まると、初のホットフラッシュ体験をしました。1日に7回ほど突然の大汗に襲われる上、ひどい肩凝り、手足のこわばり、右手小指のしびれといった副作用が起こったのです。その時は「手術までの我慢」と思って耐えましたが、「もう二度と嫌だ」と思うほどつらいものでした。

■「疑似閉経」で初めてホットフラッシュを体験

 術後、そのまま閉経するかと思いきや、女性ホルモンが上昇。生理があれば残っている左卵巣が破裂する可能性もあります。しかも過多で過長の月経はかなりひどく、久しぶりにきた生理ではベッドが殺人現場並みの惨事に。

 あまりにひどい月経症状に、仕方なく例のリュープリン注射をすると、やはりひどい肩凝りと小指のしびれ……。しかし、それをしないとまた派手な生理がやってきます。ほとほと参っていた時、懇意の編集者から紹介してもらったのが麻布十番にある婦人科でした。

 年頃も同じような女医先生で、経緯を話すと「プラセンタや漢方はどうか」と提案されました。一般的に更年期障害にはホルモン剤を使うけれど、筋腫が大きいので使えないとの理由でした。

 プラセンタの注射で何となく元気が出て、処方された漢方薬「桂枝茯苓丸」でホットフラッシュの大汗が軽減しました。この漢方薬はいまもずっと飲み続けています。肩凝りは自己流の女性ホルモン用のハーブ(赤詰草のサプリメント)で緩和、メラトニンで夜も眠れるようになりました。

 ただ、不思議と仕事への影響は一切ありませんでした。つらくて書けないと悩んだことは一度もありません。何があっても書けちゃう(笑い)。

 一番つらかったのは体よりも「心が苦しい」こと。気持ちが落ち込むことです。人は甘えから身近な人に恨みを抱いてしまいがち。我が家も過去10年間、夫婦の危機がありました。ホルモンバランスが悪くイライラしてしまう上に、男性も頑固になる年齢ですからね。更年期に離婚するご夫婦も多いと聞きます。

 この時期、心のよりどころを家庭の外につくるのも、ミッドライフ・クライシスを乗り切るコツです。私は46歳の時に同世代の仲間3人でコミュニティーサロンを始めました。私の趣味のベリーダンスをはじめ、ヨガやおしゃべりを同世代の仲間で楽しむ場所です。人数も随分増えました。毎日小一時間の運動をすると、よく眠れるし更年期症状が軽くなるんです。

 あと、年頃になって「心が落ち込んでるな」と思ったら、ホルモンバランスを疑って婦人科を受診することをお勧めします。女性の医師がいいですよ。どんなに優秀な医師でも、男性には分からない部分があると思いますので。

 暗くなりがちな更年期は、自分が楽しいと思うことを遠慮せずにやっていいと思うのです。自分を思いやり、楽しませてあげる。それが更年期を乗り切るコツです。

▽よこもり・りか 1963年山梨県生まれ。現代女性をリアルに描いた小説と、女性を応援するエッセーに定評がある。代表作「ぼぎちん」は世界で翻訳される。セミナーやワークショップなども人気。最新刊となる更年期チャレンジルポ「コーネンキなんてこわくない」(集英社)が発売中。

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