受診までの「応急処置」

【乗り物での耳閉感】まずは鼻、口を閉じてつばを飲む

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 飛行機の離発着時や電車のトンネル通過時、高い山に車で移動したときなどに起こる「耳の詰まり」。場合によっては「耳の強い痛み」「耳鳴り」「難聴」「鼓膜の内出血」なども伴う。どうして起こるのか。耳鼻咽喉科・日本橋大河原クリニック(東京)の大河原大次院長が言う。

「耳の中(中耳)と外に気圧差が生じると、鼓膜が中や外に引っ張られて耳閉感が起こるのです。中耳は『耳管(じかん)』という管で鼻の奥とつながっています。普段は閉じていますが、つばを飲んだり、あくびをしたときに瞬時に開いて気圧を調節しています。この機能がうまく働かず飛行機搭乗時症状が続く状態を『航空性中耳炎』といいます」

 乗り物に乗っていて耳閉感が起きたら、まずつばを何度か飲み込んでみる。アメ玉などをなめるのでもいい。普通なら、この処置でたいがいは症状が取れる。しかし、体調や状況によって症状が強く出たり、症状が長引いたりする場合があるという。

「アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで鼻に炎症がある人は、もともと起こりやすいので要注意です。鼻の持病がなくても、たまたま風邪をひいていたり、アルコールを飲んでいたりしても粘膜が腫れて耳管の通りが悪くなるので起こりやすく、症状も強く出やすい」

 つばを飲んでもダメなら、強制的に圧を加えて耳管の通りを促す方法がある。水泳などのときによく行う「耳抜き(バルサバル法)」だ。やり方は、鼻をつまんで口を閉じ、鼻をかむように息を送る。もしくは、鼻をつまんで口を閉じ、つばを飲み込む「トインビー法」を試してみるのもいい。ただし、やり過ぎると逆に悪化させる可能性があるので、やっても2~3回程度までという。

「2~3日しても耳閉感などの症状が改善しなければ受診してください。中耳の陰圧があまり長く続くと、中耳の粘膜から染み出た体液がたまる『滲出性(しんしゅつせい)中耳炎』を発症する恐れがあります」

 乗り物移動中の耳閉感を頻発する人は、事前に対策を取ることも大切だ。慢性鼻炎があるなら、薬で鼻の通りをよくしておくこと。アルコールは控える。移動中はアメをなめたり、ガムを噛んだりしよう。トラベルグッズで気圧変動に対応した耳栓が売られているが、効果はないという。

「処方薬には、航空性中耳炎を予防する点鼻薬もあります。飛行機内に持ち込めるので、出発前に耳鼻科医に相談するといいでしょう」