明細書が語る日本の医療

乳がん検診の“患者狩り” 受診率が高いほど死亡率は減る?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 乳がん患者が増えているのは先日見た通りですが、あまりの急増ぶりには首をかしげたくなります。それについては、「乳がん検診による『患者狩り』の影響が大きいのではないか」と指摘する専門家も大勢います。

 厚労省は40歳以上の全女性に、2年に1度は乳がん検診(マンモグラフィー)を受けるように呼び掛けています。乳房をプラスチックの板で挟んでのばし、X線写真を撮影する方法で、見落としが少なく検出率が高いといわれています。有名人の乳がんが報道されたこともあって、年々検診率が上昇していますが、それに比例するように乳がん患者も増え続けているのです。

 この問題は欧米ではすでに数年前からいわれており、「過剰診断」「過剰治療」でかえって健康を害してしまう人が大勢いることが明らかになりつつあります。しかし、早期発見によって助かる人もいるので、検診結果の利益と不利益のバランスをどう取っていくかが重要な課題になっています。

1 / 2 ページ

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。