明細書が語る日本の医療

乳がん検診の“患者狩り” 受診率が高いほど死亡率は減る?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今回はレセプトデータを使わず、都道府県別の乳がん検診の受診率と年齢調整死亡率(以下、死亡率と略す)を〈表〉にまとめてみました。受診率は2013年において「過去2年以内に検診を受けた」40歳以上の女性の割合。死亡率は15年における75歳未満の女性10万人当たりの死亡人数のこと。都道府県レベルでは、75歳以上も含めた年齢調整死亡率は公表されていません。

 受診率の全国平均は43.4%、死亡率は10.7でした。受診率の都道府県間の差は大きく、トップの山形県と最下位の大阪府では、23ポイントもの開きがあります。

「早期発見・早期治療」というがんの常識に照らし合わせれば、受診率の高い県ほど乳がんで亡くなる人が少なくなるため、死亡率が下がるはず。そういう意識で数字を見ると、確かに受診率が高い県のほうが、死亡率がわずかながら低い傾向にあることが分かります。

 山形県と大阪府を比較すると、死亡率に2割以上の差がありますし、長崎県や北海道とでは1.6倍もの差が見られます。岩手県や熊本県など受診率が高く死亡率も高い県も見られますが、検診は死亡率を下げるのに多少の効果がありそうだと言っていいでしょう。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。