かつて「カニの甲羅ががんに効く」と喧伝され、ブームになったことがありました。そのカニの甲羅を販売している男性(当時50歳)の治療を担当したことがあります。直腸がんが肺にたくさん転移して、抗がん剤治療をするために私が勤務していた病院に入院したのです。
その男性は、病室で他の患者さんに「みなさんのがんが消えます」などと宣伝文句を口にしながら、カニの甲羅を販売し始めました。もちろんすぐにやめていただきましたが、抗がん剤の点滴を受けながら、カニの甲羅を売ろうとしている姿に何か哀れを感じました。
■治療法がないと言われた患者から決まって尋ねられるが…
以前、一緒に働いていた女性(当時45歳)との悲しい思い出もあります。乳がんが再発し、がんが胸壁から頚部にかけて進んだことで気管と食道を締め付けるようになり、食事が通らなくなって入院されました。
がんと向き合い生きていく