受診までの「応急処置」

【鼻血の止血】小鼻を親指で強く圧迫する

首の後ろをたたくのは全くの間違い
首の後ろをたたくのは全くの間違い(C)日刊ゲンダイ

 鼻血は誰でも経験のある馴染みの症状。しかし、短時間に何度も繰り返してなかなか止まらない場合、間違った止血方法をしていることが多い。耳鼻咽喉科・日本橋大河原クリニック(東京)の大河原大次院長が言う。

「鼻血の8~9割方は、鼻の穴から1センチほど奥の左右の穴を隔てている鼻中隔の前部からの出血です。ここは『キーゼルバッハ部位』と呼ばれ、2系統の動脈が走っていて毛細血管が集中しています。そこの粘膜は非常に薄いので、はなを強くかむ、鼻をほじるなどのちょっとした刺激でも出血しやすいのです」

 出血部分が鼻の穴の入り口に近いところなので、昔から言い伝えられている「首の後ろ(うなじ)をたたく」「目頭に近い鼻の付け根の部分をつまむ」といった止血法はまったく効果がないという。

 鼻血が出たら、体を横にする(寝る)のもよくない。出血部が心臓の高さより低くなると血流が増すからだ。止血するときの姿勢は椅子に座ってリラックスする。そして、ティッシュや綿を丸めて鼻の穴に詰める。ここまでの処置は大半の人がやるだろうが、ポイントはここからだ。

「止血の基本は圧迫です。ですから出血している側の小鼻(膨らんでいる部分)を親指で強く押さえてください。15~30分くらい押さえます。これでほとんどの人は出血が止まるはずです」

 親指で押さえている間に鼻血が喉に流れてきたら口から吐き出す。鼻血をのみ込んでしまうと、胃壁に血がこびりついて気持ち悪くなったり、吐き気を催したりするので注意しよう。

「出血が止まっても鼻の詰め物は取らないでください。血が固まる前に新しい詰め物に替えようとすると再び出血します。それを繰り返すと余計に傷が広がって、出血が止まらなくなるのです。詰め物は翌日まで取らずに置いておく。できれば丸1日(24時間)入れておいた方が確実です」

 しかし、親指の圧迫止血を30分以上やっても止まらず、詰め物から血がしたたり落ちるようなら受診した方がいい。まれだが「白血病」や「再生不良性貧血」などの出血が止まらなくなる全身疾患が見つかるケースがあるからだ。

「鼻の奥の動脈の出血だと、自分で圧迫止血ができません。その場合、口の中からタンポンを詰めたり、レーザーで粘膜を焼いたりする治療法があります。また、脳梗塞や心臓病で抗血栓薬を飲んでいる人は出血が止まりにくいので、薬の種類など主治医に相談する必要があります」