しかし“出たとこ勝負”で、健康な母親をも危険にさらすことがある不確実な方法でした。それが人工心肺が開発されたことによって、複雑でリスクの高い方法を選択することなく、心臓を一時的に止めて行う手術が可能になりました。それほど画期的な装置といえます。
ただし、人工心肺は人工の機械なので、使用することによるデメリットもいくつかあります。まずは「血液=赤血球の寿命が短くなってしまう」ことです。
人工心肺は、機械のポンプを通して血液を送り出すため、どうしても血液にダメージを与えてしまいます。人工的な素材との接触や圧力によって、血液の一部が破壊されてしまうのです。これが人間の心臓であれば、筋肉が血液を揉み出すのでダメージが加わることはありません。人間の臓器や組織は、すべて自分を保護するようにできているのです。
一般的に赤血球の寿命は120日ほどですが、人工心肺を3時間以上回した場合は、それが2~3週間になってしまいます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」