赤血球の寿命が短くなると、貧血を起こします。貧血が起こると術後の回復が遅れたり、貧血が改善する段階でトラブルが生じます。
たとえば、高血圧がある患者さんの場合、貧血状態では降圧剤は必要なくなります。しかし、貧血が治まっていくと再び高血圧の症状が表れます。そのとき、動脈瘤があったりすると破裂する危険性があるのです。人によっては、心房細動を起こすケースもあります。
「定常流循環による臓器へのダメージ」も人工心肺のデメリットのひとつです。心臓の拍動には「ドクン、ドクン」という波があります。この拍動流が、全身の隅々まで血液を運んだり、血圧を維持するなどの働きに必要で、脳や腎臓などの臓器を保護しています。
一方、人工心肺のローラーポンプで血液を送る場合は、量は十分に送れても拍動=波がありません。無拍動流と呼ばれる波のない循環によって、少なからずダメージを受ける臓器があるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」