Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

がん治療にもリハビリが欠かせない理由

なるべく体を動かす(C)日刊ゲンダイ

■退院後の「外来」実施は拠点病院でも4分の1

 退院後も適切な運動などのリハビリを続けると、それらの機能は1年ほどで元に戻るといわれています。

 食道のほか、胃や大腸、肝臓、膵臓などの消化器がん、肺がん、咽頭や喉頭、口腔、舌などの頭頚部がん、そして乳がんなど多くのがんにリハビリが必要です。では、どんなリハビリが必要なのでしょうか。

 手術前後の代表的なリハビリのひとつに、「呼吸リハビリ」があります。手術の痛みや麻酔などの影響で呼吸が浅くなると、痰を思うように排出できず、肺の奥にたまって肺炎のリスクが高まります。それを防ぐのが呼吸リハビリで、手術前に腹式呼吸の方法をマスターしておくのです。

 考え方の大前提として手術後は、なるべく早くベッドを離れ、できる範囲で体を動かすこと。抗がん剤や放射線の副作用などがつらくても、寝たきりは避けます。つらいからといって長く動かないでいると、筋力が低下し、最悪の場合、寝たきりを余儀なくされる廃用症候群になりかねませんから。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。