夏の紫外線でリスク増 失明する目の病気に中高年は要注意

都会のサラリーマンが危ない(写真はイメージ)
都会のサラリーマンが危ない(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 太陽がまぶしい季節がやってきた。太陽光に含まれる強烈な紫外線が目にダメージを与えることは知られているが、とくに中高年が注意すべき目の病気がある。眼科専門医で清澤眼科医院(東京・江東区)の清澤源弘院長に聞いた。

「強い紫外線は短時間でも浴びると目の表面がやけどを起こして充血や角膜炎、ドライアイなどの急性障害を起こすことが知られています。しかし、より怖いのは長期間浴び続けることで、白内障や翼状片、あるいは加齢黄斑変性症といった、慢性の視力障害を起こすことです。また網膜色素変性症ではその進行が加速されます」

 白内障は目の中にある水晶体が白く濁り、視力に影響が出る病気だ。景色がかすんだり、光をまぶしく感じたり、物が二重に見えるようになる。放っておくと失明する危険もある。

「一般的には50~60代に発症する病気ですが、漁師や農家の方、サーファー、プロゴルファーやテニスコーチら紫外線を特別多く浴びる職業の方は発症しやすいといわれています。白内障の主な原因は加齢で、紫外線がどの程度関与しているかは個人差がありますが、リスクであることは間違いありません」

 白内障と合併しやすいのが翼状片だ。白目の表面を覆っている半透明の膜である結膜が目頭から黒目に三角形状に入り込んでくる病気で、太い血管を伴っているため常に目が充血しているように見える。

「見た目さえ気にならなければ、とりあえずはそのままでも問題ありません。しかし、進行すると、瞳孔にかかったり乱視が出るなどして視力に影響してきます」

 沖縄県の久米島で琉球大学が主体となって行った研究では、40歳以上の30%が翼状片を発症していたという。また、事務職の人より農家や漁師の方の発症率が高いことも報告されている。

 加齢黄斑変性症の最大のリスク要因は加齢や喫煙だが、紫外線も侮ってはいけない。

「網膜の中心にあって、物の形や大きさ、色、奥行き、距離など光の情報の大半を識別する黄斑に異常が発生する病気です。虹彩の色が薄く、紫外線の影響を受けやすい白人の発症が多く、欧米では失明第1位の病気です。日本でもここ10年で患者数が2倍にまで増えています」

 網膜色素変性症にも注意が必要だ。

「目の中で光を感じる網膜に異常が起きる遺伝性の病気で、日本では10万人に18.6人がいるといわれています。最初は暗い所で物が見えにくくなり、やがて視野が欠け中心を残して見えなくなります。最悪、失明します。紫外線が病気の進行を助長することが分かっています」

■レンズが濃すぎるサングラスは逆効果に

 発症年齢は個人差があり、若い頃に相当進行している場合や40歳になって初めて自覚症状を感じるケースもある。

 同じ時間、紫外線を浴びたとすると、紫外線による目の病気のリスクは田舎より都会の方が高いかもしれない。紫外線がアスファルトやビルの壁面などに反射して目に入るとされているからだ。

 金沢医科大学などの調査によると、ビルの多い東京・神田で、太陽の正面を向いたときに目に入る紫外線量と、背を向けた場合とを比べたところ、午前中から正午にかけては後者は前者の60%程度だったが、夕方4時くらいには164%となり、太陽の正面を向いたとき以上に紫外線量が多かったという。同じ調査を金沢医大の屋上で行ったところ、背面時の目の紫外線量は午前11時から午後1時の30%がピークで、それ以外の時間は10%程度だったという。

「それだけ都会の方が紫外線の反射が多いということでしょう。ちなみに春から秋にかけて、目に関しては日中よりも朝夕の方が約2倍近く多くの紫外線を浴びることも報告されています」

 では、紫外線から目を守るためには具体的に何に注意すればいいのか?

「紫外線から目を守るためにはサングラスを掛けるしかありません。ただし、サングラスの両脇からも紫外線が入り込んでくるため、それを避けることを目的とするならば両脇もガードするようなタイプのものがいいでしょう。なお、レンズの色は薄めを選びましょう。濃過ぎるサングラスだと瞳孔が開くため、かえって紫外線が目の奥に届くためにリスクが高くなるといわれています」

 普段コンタクトレンズをつけたり、眼鏡を掛けている人は紫外線カット機能がついたものを選ぶのも手だ。

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