浴びないのは実は不健康 太陽光が体に良い「3つの理由」

健康な人はさほど紫外線に神経質になる必要はなさそう
健康な人はさほど紫外線に神経質になる必要はなさそう(C)日刊ゲンダイ

「肌が汚くなる」「目が悪くなる」「老化を促す」――。すっかり悪者扱いされている紫外線だが、本当は体に良いとする研究も少なくない。日焼け止めクリームや日傘などで紫外線を完全シャットアウトしているあなたは、実は健康を損ねているのかもしれない。

「紫外線を浴びることで血圧が下がることが報告されています」

 こう言うのは東邦大学医学部の東丸貴信名誉教授だ。報告したのは皮膚科学のエキスパートで英国エディンバラ大学のリチャード・ウェラー医学博士。皮膚が紫外線にさらされると、皮膚細胞に蓄えられた一酸化窒素が放出されることで血管が広がり、血圧が下がるという。実際に日焼けマシンを使った実験では使用後1時間で血圧が下がったことが確認されたという。

「紫外線により、血管拡張物質である一酸化窒素が皮膚から放出され、この一酸化窒素がサイクリックGMPを活性化します。これが血管の太さを調整する血管平滑筋に働いて動脈を拡張させるのです」(東丸名誉教授)

■子どもの近視抑制に効果あり?

 さらには、脳の視床下部や松果体が光を感知することで自律神経の調整が行われ、交感神経が抑えられる。これらの総合的な作用により血圧が下がるのだという。

 むろん、日光を浴びるメリットはそれだけじゃない。体内でビタミンDを作る作用もある。

「ビタミンDには骨の成育に必要なカルシウムの体内吸収を高めるだけでなく、免疫作用をアップするなど、病気の予防効果があることがわかっています」(東丸名誉教授)

 逆にビタミンDが不足すると骨へのカルシウム沈着障害が起きて、骨粗しょう症やくる病などの病気を発症させる原因になるといわれているほか、がんなどの病気の罹患率を高める可能性が指摘されている。

 ビタミンDは魚やキノコなどの食べ物に多く含まれているが、食物だけで必要量を確保するのは難しい。紫外線を浴びることで皮膚のなかで生成する必要がある。

 驚くべきは、最近の研究で紫外線にきわめて近いバイオレットライトと呼ばれる太陽光を浴びることで近視の進行を抑制する可能性が報告されていることだ。眼科専門医で清澤眼科医院(東京・江東区)の清澤源弘院長が言う。

「慶応大学の研究チームが昨年末に発表しました。紫外線と可視光線の中間にあたる波長360~400ナノメートルの光を浴びた近視のヒヨコは近視の進行が抑制されただけでなく、近視抑制遺伝子の数値が上昇していることがわかったのです。臨床研究からもバイオレットライトが通過するコンタクトレンズを装着している人はそうでない人に比べて、近視の原因のひとつとされる眼軸長の伸長が抑制されることが判明したそうです」

 この研究のキッカケは同じ中国人でもシンガポールに住む子供に比べてオーストラリアに住む子供の方が近視になる率が低かったから。原因を調べたところ、遺伝や読書時間などよりも戸外での活動時間に近視との相関関係が強かったという。

 とはいえ、紫外線を浴びることは皮膚がんや目の病気につながるのではないか?

「紫外線を浴びるといっても、必ずしも直射日光に皮膚や目をさらす必要はありません。天気のいい日なら、木陰にいるだけでも十分です。それも1日数十分程度でいいのです」(東丸名誉教授)

 そもそも日焼けが皮膚がんを発生させる率は、一般的に考えられているよりもずっと低いことがわかっている。スウェーデン女性を20年間追跡調査した研究では、太陽光を避ける群は積極的に浴びる群よりも寿命が0・6~2・1歳短くなると見積もられている。白内障や加齢黄斑変性症、網膜色素変性症など目の病気のリスクの高い人はサングラスで目を守る必要があるが、健康な人はさほど紫外線に神経をとがらせる必要はなさそうだ。

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