春の健診シーズンで、その結果に一喜一憂している人もいるでしょう。今回は、健診メニューのひとつ、「便潜血検査」、いわゆる検便についてです。
表面をこするように採取した便に、血液が含まれているかどうかを調べるもの。大腸の粘膜にキズがあると、そこから出血、検査結果が陽性に。原因として最も怖いのが大腸がんで、大腸がんを早期発見するために大切な検査です。
ポイントは2回分の便を採取すること。大腸がんの発見率は、1回だと45%とそれほど高くはありません。2回だと70%にアップします。さらに2年目(合計4回)は91%、3年目(合計6回)は97%とグンと精度が上がるのです。
そこで陽性だと、大腸内視鏡検査で詳しく調べますが、現実には内視鏡での見落としもあることから、大腸がんは8割が早期発見できるとされます。ステージ1だと、5年生存率は99%。早期発見すれば、ほぼ治るのが大腸がんです。
ところが、大腸がんは患者数も死亡数も増え、昨年は14万7200人が発症し、5万1600人が亡くなったと予測されています。米国の死亡数予測は5万260人と、ピーク時の半分程度になっているのとは対照的でしょう。
なぜか。大腸がんは運動不足や肥満、肉の食べ過ぎなどメタボな生活が大きな原因。欧米型のがんの典型で、メタボの広がりとともに急増しているのです。もうひとつは大腸がん検診の受診率が2割と低いこと。これも米国の半分以下です。
その2つが重なって、人口は米国の半分程度の日本で、米国に匹敵する人が大腸がんで命を落としているのです。検便に抵抗があっても、ぜひその考えを改めるべきといえるでしょう。
仮に検査結果が陽性でも、すべてが大腸がんとは限りません。ポリープや痔の可能性もよくあります。しかし、3割程度の確率で見つかるポリープは、がん化の恐れがありますから、早いうちに内視鏡で切除すれば、大腸がんの“芽”を摘み取ることができます。
便潜血検査が陽性と分かったら、なるべく早く精密検査を受けるのが無難です。米国で、便潜血検査の陽性判定から大腸内視鏡検査を受けるまでの間隔で、大腸がんの発見や進行がんで発見がどうなるか調べた研究があります。「8~30日」で内視鏡検査を受けた人を基準にすると、「10カ月超」で大腸がんの発生数も進行がんの発生数も多くなりました。
前述したように大腸がんは早期なら100%に近い確率で治るのですから、陽性結果を受けた方はグズグズせずに内視鏡検査を受けることです。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁