役に立つオモシロ医学論文

若い医師のほうが担当患者の死亡率が低い?

 医師の年齢によって、診療の質に差が出るかどうか、あまり知られていないようです。

 なんとなく、診療経験が豊富なベテラン医師のほうがより良いケアを提供できるようなイメージがあります。しかし、医学は日々進歩していて、常に最新の情報を診療に取り入れていかねばなりません。つまり、経験が豊富であっても最新の医学的知見が診療に反映されているかどうかについては別問題というわけです。

 2017年5月16日付で英国医師会誌に、「診察する医師の年齢と、その担当患者の死亡リスクの関連を検討した論文」が掲載されました。この研究は、米国において11~14年の間に入院した65歳以上の患者を対象としたもので、医師の年齢と、入院後30日以内の担当患者の死亡リスクが検討されています。なお、結果に影響を与えうる、患者の重症度や医師の特性などで統計的に補正をして解析をしています。

 最終的に1万8854人の医師によって治療を受けた73万6537件の入院データが解析されました。30日以内の患者死亡率は40歳未満の医師で10.8%、40~49歳の医師で11.1%、50~59歳の医師で11.3%、60歳以上で12.1%でした。

 40歳未満の医師が診察した患者死亡率と比較すると、40~49歳の医師では4%、50~59歳の医師では7%、60歳以上の医師では17%、統計学的にも有意に死亡リスクが増加するという結果でした。

 もちろん、若い医師のほうが担当患者の死亡リスクが低いと結論することは難しいように思います。ただ、年齢が若かろうが常に最新の医学的知見を診療に取り入れている熱心な医師は、経験豊富なベテラン医師に負けないくらい適切なケアを提供できる、とは言えるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。