あの話題の治療法 どうなった?

75歳以上の脂質異常症治療薬で筋力低下や筋肉痛も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本ではいままで心筋梗塞や脳卒中の予防と称して高齢者がコレステロールを下げる薬(スタチン)を服用するのは常識とされてきた。

 実際、2014年の「国民健康・栄養調査」によると、70歳以上の24.8%が服用していたという。

 コレステロールという脂質は体に必要な物質だが、血液中の量が増えすぎると、血管が詰まって心筋梗塞や脳卒中などを起こしやすいことが知られている。スタチンはコレステロールを少なくする薬である。

 まったく問題なさそうな治療法だが、数年前から「問題あり」という声が強まっている。

 理由は米国医師による「本当に必要十分な医療を提供しよう」という運動のひとつとして米国慢性期医療学会が「75歳以上の心疾患の既往症のない人にとって、スタチンの服用は良くないかもしれない」と指摘したからだ。これをキッカケに、「75歳以上の高齢者にスタチンは必要ない」との流れに日本もなりつつあるのだ。都内の循環器専門医が言う。

「理由はコレステロールが高い高齢者は心臓病になりやすく、死亡率が高いなどという明確なエビデンスがないからです。むしろ、コレステロール値が最も低い高齢者は死亡リスクが高いうえ、筋肉痛や筋力低下を引き起こし、骨格筋の細胞が壊死する横紋筋融解症という病気を発症する可能性があります」

 しかも高齢者の場合、転倒や記憶喪失、吐き気、便秘、下痢などを引き起こす可能性がある。

「高齢者は別にたくさんの薬を飲んでいるケースも多い。スタチンとの相互作用で重大な病気を招きかねません」(前出の循環器専門医)

 投薬治療の常識も日々変わってきている。覚えておこう。