数字が語る医療の真実

魚の脂とコレステロール 心筋梗塞などの合併症予防に効果

(C)日刊ゲンダイ

「日本人が長生きなのは魚を食べるからだ」という説があります。魚、特に海の魚に多く含まれる「EPA」(エイコサペンタエン酸)、「DHA」(ドコサヘキサエン酸)に代表されるオメガ3系脂肪酸がコレステロールを下げ、動脈硬化予防に役立っているかもしれないというのです。

 これは単なる仮説というだけでなく、それなりの根拠がある説です。

「EPA」「DHA」と「コレステロール」「心筋梗塞」「脳梗塞」との関係を示す研究があります。日本人を対象として「EPAを投与して心筋梗塞などの合併症がどれくらい予防できるか」を検討したランダム化比較試験です。

 研究では、「EPAを使わないグループ」と比較して明らかなコレステロールの低下は認めませんでした。しかし、心筋梗塞などの合併症は「EPAなしのグループ」で3.5%に対し、「EPAを飲んだグループ」では2.8%、100の合併症が89に減るという結果でした。しかし、その後に行われた欧米での研究結果を含めて検討した結論では、明らかな合併症予防効果が示されませんでした。

 ただ、EPA、DHAの「摂取量が最も少ない下から20%のグループ」と「最も多い上から20%のグループ」で比べてみた日本人の研究では、摂取量が多いグループで67%も心筋梗塞などの合併症が少ないことが示されています。

 また「脳出血が増えるのではないか」との懸念がありましたが、今のところそのような研究結果は報告されていません。

 現状では「悪い」というデータは少なく、日本人では「良い」というデータが主流です。EPA、DHAを含む魚の摂取は、コレステロールを下げるかどうかはハッキリしません。しかし、心筋梗塞などの合併症予防の点で、十分勧められる食事のようです。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。