医者も知らない医学の新常識

AEDの使用1年後の効果 死亡や脳障害リスクが格段に低下

AEDが身の回りのどこにあるか探してみよう
AEDが身の回りのどこにあるか探してみよう(C)日刊ゲンダイ

 AEDという機器があります。「自動体外式除細動器」と訳されていますが、重症の不整脈で機能しなくなった心臓を治療するための電気ショックのことです。

 以前は医療従事者や救急隊員しか操作することは出来なかったのですが、2004年から一般の人でも使用が可能となりました。皆さんも街で見かけたことがあると思いますし、救急蘇生の講習を受けられた方もいるのではないでしょうか。

 医療機関の外で突然不整脈による心停止を起こすと、そのまま救急車が来るのを待っていても救命は難しく、脳に後遺症が残ってしまいます。不整脈による心停止は、いつどこで起こるか分かりません。そのため、応急処置はその場にいる人がすぐに行うことが最善なのです。

 それでは、実際にAEDを現場で使用することにより、どのくらい患者さんの予後は改善するのでしょうか。これまでに心停止後1カ月の効果は確認されていましたが、より長期の予後については、あまりデータがありませんでした。それが、今年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という医学誌に、使用後1年の効果が報告されました。

 それによると、1年後に脳障害の残るリスクも、死亡するリスクも、いずれもAEDや心臓マッサージの使用により、格段に低くなることが確認されました。今の装置は自動で操作が可能ですから、皆さんも身の回りのどこにあるか、気を付けて探してみるようにして下さい。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。