「がんと仕事」厳しい両立

支援制度はあっても…働き続けた人の1割が会社を変えた

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 たまたま会社を辞めずに済んだとしても、不利益を強いられることがある。前出の調査では1割以上の人が、評価が下がったり、給与が下がったりしていた。役職を降格されたケースもある。

「治療のために働く時間や日数が短くなったことで、その分、給与が少なくなることは納得できるでしょう。ただ、本人が望んでいないのに、過度な配慮で、配置換えをされたり楽な仕事に回されて給料が減る場合もある。フルで働けない人を適切に受け入れる環境が整っていない職場はまだ多いのです」(矢島洋子主席研究員)

■治療費をリボ払い

 罹患時に派遣社員だと、もっと悲惨である。金銭的に余裕がないため、居づらかろうが陰口を言われようが、休めないし、辞められないのだ。

 デザイン関係の仕事をしている横浜在住の女性(55)は、3年前、軽度の膠原病で通院していた総合病院の内分泌科で胸のしこりについて相談したところ、乳腺科を紹介されて乳がんと分かった。ステージⅠで大きさは1センチほどだったが、最初に医者に話したのは「お金がない」ということ。貯金はなく、民間の医療保険にも入っていなかった。独身の一人っ子で頼る兄弟姉妹はおらず、母は高齢。仕方なく5歳の時に母と離婚した父に連絡し借金を頼んだが断られる始末。社会保険組合に申請すれば上限が8万円になると教えられ、なんとかクレジットカードのリボ払いで支払ったという。

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