ストレスで円形脱毛症に……。よく聞く話だが、ストレスはひとつのきっかけに過ぎない。
たとえ、毎日がハッピーでも円形脱毛症になる。円形脱毛症は、異物を攻撃する免疫細胞が、自分の体の一部(円形脱毛症では毛根)を攻撃し、発症する自己免疫疾患だからだ。
その原因はさまざまで、ストレスが引き金になっている場合もあれば、インフルエンザ感染などがきっかけだったり、原因らしきものはまったく思い当たらない場合もある。
「つまり、だれでもなる可能性があるのです」
こう話すのは、横浜労災病院皮膚科部長の斉藤典充医師。では、もし自分や家族が発症したら、どうすればいいのか?
①数や広がりに注意
円形脱毛症には、1カ所だけ丸く抜ける「単発型」、それが複数できる「多発型」、脱毛が広がり頭部全体の髪が抜ける「全頭型」、まつげやひげ、体毛まで抜ける「汎発型」などがある。
「単発型で脱毛斑が広がっていかないようであれば、自然治癒する可能性が高い。3カ月ほど様子を見てください。その間は通常通りの生活で構いません。育毛剤も、円形脱毛症であればほぼ効果がないため不要です」
②抜けた部分の周囲の毛を引っ張ってみる
今は1カ所だけでも、今後広がっていくかもしれない。それをチェックするには、脱毛斑周囲の毛を引っ張ればいい。
「免疫細胞が攻撃している毛根が単発型の“丸”の部分だけであれば、周囲の毛は抜けません。ほかの部分の毛根も攻撃していれば、引っ張れば抜けます。単発型でも皮膚科の受診が望ましい」
③脱毛部分が多い、広がる場合は皮膚科へ
「円形脱毛症だと思っていても、膠原病の皮膚変化や、水虫など他の疾患の可能性があり、鑑別診断が重要です」
円形脱毛症は自己免疫疾患だが、同じ自己免疫疾患の甲状腺機能低下症・亢進症などが隠れている場合もあり、これらの診断には血液検査が必要だ。
なお、毛が徐々に細くなって抜ける男性型脱毛症(AGA)と、今のままの太さの毛が突然ごそっと抜ける円形脱毛症では明らかに違う。
④治療で6~7割は治るので思い詰めない
治療は、ステロイド剤などの外用剤、液体窒素を用いた冷却療法、頭部にかぶれを起こす局所免疫療法、ステロイド剤の局所療法、紫外線療法などが行われる。慎重な選択になるが、入院して大量のステロイド剤を点滴するステロイドパルス療法もある。
「ステロイドパルス療法を除き、早期開始が治療成績を如実に上げるというものではない。ガイドラインを基本に、患者さんの様子を見ながら時にはいくつかの治療を組み合わせて経過を見ます」
円形脱毛症の患者にはアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を併発している人が多く、抗ヒスタミン剤の服用で症状が改善したという報告もあり、実施されている。
ストレスはひとつの引き金に過ぎないが、それとは別に円形脱毛症そのものがストレスになり、引きこもりなどになるケースも。だからこそ「思い詰めない」ことだ。
⑤子供の例では親の態度も重要
円形脱毛症は好発年齢が特になく、子供から高齢者まで発症する。
「子供の場合、両親の過度な不安が子供に伝わり、子供の不安をよりあおることが珍しくない。お子さんの前では心配や不安を口に出さないように、と指導します」
子供の円形脱毛症もメカニズムは大人と同じ。ただ、治療は安全面を考慮して、外用薬や冷却療法、局所免疫療法など、大人よりも限られる。